「意識・無意識・識域下」



「・・・で、我輩はこうやり返した訳でありますよ」
「んー」
「聞いているでありますか?クルル曹長」
「んー」

クルルズラボのモニターに向かい、いつものように猫背になってクルルは作業をしていた。
ケロロはその椅子の背によじのぼって、さかんに話しかけていたのだが・・・。

「もー・・・」と呟いてケロロは椅子から滑りおり、ぺったりと床へ座り込む。
クルルはそれに対しても

「んー」

と気のない返事を返すだけ。

その陰剣で陰湿で陰鬱な気性にもかかわらず、クルルは仕事には真面目だ。

「変なトコでマトモだよねー・・・」

「んー」

仕事に集中するあまり、ケロロの話など右から左だ。
元々、くだらないお喋りなぞを聞いてくれるクルルではないが、こうも生返事ばかりされては頭にくる。
ケロロはぷうっと頬を膨らませた。
座ったままクルルの椅子へもたれ、投げ出した足の踵で床をドンドンと鳴らす。
すねているのだとアピールしているのに、キーを叩く音は一定で、クルルに変化はない。
現在のクルルの優先順位第一位は仕事なのだ。
それがケロロには面白くない。

「・・・なんだよ、クルルの馬鹿ー」

「んー」

「意地悪」

「んー」

「カレーフェチ」

「んー」

「びん底メガネ」

「んー」

全く耳に入っていない。何を言っても返事は同じ。でもどうせ同じならば・・・。

「クルル」

「んー」

「我輩のコト、好き?」

「んー」

「ホントに好き?」

「んー」

「我輩も、クルル好き」

「んー」

・・・えへ。

ケロッと笑って立ち上がる。
たとえ惰性でだされた答えでも、まるでホントにクルルが自分の事を好きだと肯定してくれたようで嬉しい。
・・・なんつーか、虚しい気もするが。そこはあえて右から左。
どさくさ紛れに告白までして、ご機嫌になったケロロはラボから出ようとして、ふと思い付いてこう聞いた。

「ねー、クルル」

「んー」

「我輩の事、キライ?」

「好き」

「・・・・・・・・へ?」

と、ケロロが聞き返す。けれど返事はやはり

「んー」

聞き間違いかともう一度問う。

「我輩のコト好き?」

「んー」

「キライ?」

「好き」

クルルの動きにはなんの変化もない。そして聞き違いでもない。
つまり、クルルは無意識に返事を・・・

「きぃーーーーやーーーーっっ!!」

叫んで、ケロロはラボを飛び出した。
闇雲に走るケロロがどこかにぶつかっているのだろう、ガンッ!ゴンッ!と派手な音がする。

「んー」

それでもクルルは気がつかなかった。ただ、急に背中が寂しくなったと感じただけで。

聞いていてもいなくても、意識してもしなくても、クルルの優先順位はケロロが断トツ独走トップ。
どんなに上の空でいようとも、ケロロを嫌いだなどと言ったりしないのだ。

その後、ケロロは意識的にクルルを避け、クルルはその無意識の寂しさを、小隊各員(特に赤)に嫌がらせをして晴らしたのだった。




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