天候、晴れ。夜明け前の爽やかな空気は心地よく、遠くに新聞配達のバイクの音が響く程度の、静かな朝。まだ住民の寝ている日向家の地下では、真剣な顔をした五匹のカエル(型宇宙人)が顔を突き合わせていた。 戦闘準備を終え、すでに作戦会議も終わっている。まずはエッグハントの開始とともに、クルルがオーバーテクノロジーを検出する装置を街にばら撒く手筈になっていた。どんな微弱なものでも拾い、卵の孵化装置を見つける指標とするのだ。それがケロン製のものであれば誰かが直接確認を行なう。その際には危険が伴うので細心の注意が必要だが、狙撃を行なわれないための様々なルートは検索済みだ。更には、実行部隊であるギロロ、ドロロ、タママの三人は、ビーム吸収シールドを搭載した階級章に付け替えている。地球人に被害を出すわけにはいかない。流れ弾の行方を考えるのであれば、ガルルは実弾ではなく光線銃を選択しているはずだった。 「恐らくは直接対決を選択するだろうがな」 「直接対決なら任せるですぅ」 指を鳴らしながらタママがにこやかに受け応える。現時点でできる範囲でのスナイパー対策は万全だ。 「スナイパーがいることはこっちが知っちゃったでありますからなぁ」 「後は、ガルル中尉殿の他に誰が来ているかということでござるな」 「検索にはひっかからねぇ。まだポコペンの外にいるんだろう」 ガルル一人だけでも十分な脅威だが、残るメンバーも不安材料だ。ケロン軍最高精度スナイパーの肩書に見合うだけの面子であれば、それぞれが強敵である。 「ま、アレコレ悩んでても仕方ないけどね〜。ケロロ小隊、正しく『適当』にヨロシクであります」 「当然だ」 「任せるですぅ」 「心得た」 「ク〜ックックック…」 ケロロの少し砕けた物言いに、各自が自分の言い方で了解と返す。 ケロン式エッグハントのスタートまでは後わずか。明日もこのメンバーで向かえるのだと、誰もが静かに闘志を燃やしていた。 至って静かな午前だった。次々と拾い上げられるオーバーテクノロジー反応は殆どが既知の物。元々いる異星人のものや、ケロロ小隊が設置しているものだ。新たなものも、たまたま来星した異星人が引っかかってしまっただけで、クルルの確認作業だけで終わってしまう。昼近くになっても、まだガルル以外のガーディアンも侵入異星人検索にすら現れてはこなかった。 「まさかガルル中尉殿一人ってことはないでありましょうな」 「それはない。スナイパーはスナイプエリア確保の為に、必ず部下がいるはずだ」 「タマゴの設置は現地が規則。それすら見付からぬとなれば、よほど巧妙に隠されているのでござろうか」 「フツーに一日で孵化タイプとか? ソレだったら、機械は必要ないですぅ」 「いや、使ってんのは生物兵器対応検出器だ。ポコペンにないタマゴは拾うぜぇ〜」 何の収穫もなく時間ばかりが過ぎて行き、ケロロ小隊の面々にやや焦りが見えだす。かと言って闇雲に捜してもターゲットが見付かるはずもなく、何らかの手がかりを入手する必要があった。 「喧嘩を売って来いってことだろうな」 「ガルル中尉殿をつつくのでありますか〜。ヤブヘビになりそうでヤなんだよねぇ」 現在分かっている手がかりはガルルの存在のみ。居場所も分かっている。彼は今、西澤タワーの天辺で悠々と銃の手入れをしていた。 日が暮れてしまえば捜索は難易度が上がるので、できれば日のある内に何とかしたい。ガルルをつつけば他のメンバーも出てくるだろう。敵の人数が増えれば、情報量も多くなる。 「でもま、仕方ないでありますか」 このままにらめっこで終わるワケにも行かない。ケロロの号令の元、ギロロ、ドロロ、タママの三人は、基地から出撃して行った。 「作戦アレフ終了。予定通りベイトに移行する」 ケロロ達がガルルへの攻撃を決定するわずか前、西澤タワーで銃を磨いていたガルルがポツリと呟いていた。 基地に残ったケロロとクルルが基地を飛び出した三人の様子をモニター越しに見ていると、警告のウインドウが画面に二つ開いた。地球内侵入異星人検索に、ケロン人が引っかかっている。その内一人は知った顔だ。 「ゲロ…? タママ二等の後輩の…」 「と、ガキが一匹? どう言うこった?」 検索画面に表示されている水色のケロン人は、以前に会ったことがある。確かタルルという名前で、その時はまだ尻尾付きだったのだが、今は成年体に成長しているようだ。もう一人の、オレンジ色の幼年体のコは初めてみる顔だった。 拍子抜けする面子だが、このタイミングは微妙である。ただ遊びに来たのかガーディアンなのか、判断が難しい。 『隊長殿…っ!』 二人がタルル達の存在に気を取られていると、通信機からドロロの声が届いた。どうしたのかとみんなを映し出している画面を見ると、散開して一人になったドロロの側に、何やら不気味な影柱が立っている。 「な…ナニそれっ!?」 『コレには近付かぬよう、お頼み申す』 いつもは柔和な表情のドロロが、アサシンの顔付きになっていた。一言残してその柱の中に消える。 「ナニがドーなってんの?」 「ありゃぁ…暗殺界だな」 「アサシンゾーン?」 「ああ。噂にしか聞いたことはねぇが」 アサシン専用閉鎖式決戦時空、暗殺界。それはアサシンが己の有利な場へと敵を誘い込む技だ。かなりの手だれでなければ造ることは適わず、その空間は外と隔離されている。人の直接な出入は可能なのだが、超空間を利用しての行き来はできない。 「中の情報は収得不可能…。ターゲットがあるかもなぁ」 「アサシンも来ているってことでありますか」 そして中にいるのは、確実に手だれのアサシン。宇宙政府公認の厳しい来星チェック機が取りこぼすほどのステルス能力の持ち主だ。ドロロが真剣になるはずである。 「ク…!」 突然、画面が切り替わった。ウインドウが消え、ケロン軍のマークが中央に表示されている。 「やりゃぁがったな…」 呟くなり恐ろしい勢いで作業を始めたクルルを前に、次々と展開して行く出来事へケロロは対応できずにいた。暫く呆気にとられたように眺めていたが、漸く我に返るとどうしたのかと訊ねる。 「基地内ネットワークに侵入された。取り返さねぇと、情報が収得できねぇ」 ケロン式エッグハントには絶対に必要なシステムだった。暗殺界の中にあるのであれば不要だが、確定ではない。アサシンでもトップを走るドロロを足止めするためだけにアサシンが起用されていることも考えられる。 「このタイミング…検索に引っ掛けたのはワザとだな」 基地のセキュリティはかなり高い。並みの腕では突破できないシステムをクルルは構築している。そんなクルルのセキュリティをすり抜けて侵入するほどの技術があれば、地球内侵入異星人検索をごまかすことも可能なはずだった。つまり、来星を知らせたのはワザとだ。 「あのガキだな。ナメられたもんだぜぇ…」 子どもと元子どもの来星に拍子抜けした。そしてアサシンの存在に気を取られた。その隙を、突かれた。タルルにはどう考えても技術職のスキルはないので、もう一人の幼年体のケロン人がクルルの敵と考えられる。己の外見を利用している、なかなかの頭脳プレーだ。 「じゃあ、あのタママ二等の後輩も」 「ガーディアンと見て間違いねぇだろ」 「それ…ヤバくね?」 あのタママを師と仰いでいたということは、肉弾戦向きの戦闘員。タママの戦闘力は半端ではないが、タルルの力は未知数だ。そして一般人の後輩として知っている顔なだけに、ケロン軍に入っていることを知らずに気を抜いていたら、隙をつかれる恐れもある。だが、タママに現状を知らせる方法がない。 戦力を分散させたのは、それぞれが一対一でもイケると見越してのことだろう。ガルル達は撃破まで行かなくとも、時間を稼げばいいのだ。 −−我輩に、できることは−− 持ち込んだ時計を見詰め、ケロロは悔しそうに歯を食いしばっていた。 続く +++++++++++++++++++++++ まだどこがクルケロなんだか。ところでタルルの認識、合ってる? 24時がなかったとしたら、ケロロ達が知ってるのってこのくらいだよね、たぶん。つまりチロカラ回の前だな。次は戦闘です。ワクワクです。今半分くらいだろうか(やっぱり他人事のように) |
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