それぞれをちょっとずつ。



AIGIS

「何が目的だ!」
「さぁねぇ」
 ニヤリと笑うと、その姿は背景に溶けた。アンチバリアかとギロロはサーチ用の装置を呼び出して片目に装着するが、見付けることができない。鎖を撃ち落としながらキョロキョロと視線を馳せるのだが、アンチバリア反応すら拾うことはできなかった。
「残念。私のはアンチバリアではない」
 背後から声がして、ギロロは振り向くことはせずに肩越しに銃を撃つ。そのまま横に飛んだ。
「おしいな」
 ギロロの目の前に、突然自分の姿が現れていた。向けられていた銃口を避けようと、鎖から一瞬注意が逸れる。その隙を突き、地面から伸びてきた無数の鎖がギロロを拘束していた。
「貴様、ルディス星人か…っ」
 ルディス星人は擬態能力を持つ侵略型宇宙人である。多くの宇宙人と違ってアンチバリアを用いずに姿を隠す事ができ、個体によっては姿形をかえることすら可能だった。その擬態能力は機械を用いるわけではないので、アンチバリアを見破る装置を使って見付けることはできない。
「一般兵にしてはアサシンである私を相手によく頑張った。その栄誉を称え、質問に答えてやろう。正解だ」
「ふざけるな」
「私は真面目だが?」
 ギロロの姿のまま受け答えると、次いでルディス星人はドロロの姿になり、ギロロに顔を近付けた。
「私はこの男を探している。ケロン軍のアサシンのくせに弱い男だ。貴様は大いに役に立つだろう」
「貴様…っ」
「自殺はさせん、ケロン兵よ。貴様ら自慢のアサシンの、トップに立つ男が葬られる様を見物するがいい」
 愉快そうに笑いながら拘束されたギロロを抱え、ルディス星人の姿は日向家の庭から掻き消えていた。



My Ares

 宇宙港へと船を着船させたクルルが手元の画面を見ながらパネルを操作すると、通信が届いていたらしく大きなモニターが皆の前に開いた。
『ケロロ軍曹殿、ケロロ小隊の諸君、久しく』
「た…っ、大佐っ!?」
 目の前の画面には、ケロロ小隊が含まれる本隊の、大佐の姿が映しだされていた。ケロロを始め、小隊のメンバーはビシリと敬礼をする。尤も、クルルは相変わらずゆるゆるとした動作だったが。
『騙すようなことをして申し訳ないのだが、諸君にはこれから、一時別任務に当たっていただきたい。勿論、終わってからはそちらでゆっくりしてから、任務に戻って構わない』
 大佐は一応断りを入れ、今フレアー星が陥っている窮地について説明をしだした。
 フレアー星は現在、花喰蟲に汚染されていた。その名の通り花を食べる宇宙虫だが、大量発生してしまうと花のみならず葉も茎も、全て食べてしまう害虫だ。現在の被害は地表の五パーセントほどで、日々拡大を続けている。花に覆われている星なだけに、このまま被害が広がればただの土くれだけの星になってしまうだろう。
 宇宙から見たフレアー星が所々ハゲていたのはその所為かと、ケロロ達は顔を見合わせる。
『マザーを見付けだし、排除するのが諸君の任務である』
 花喰蟲には女王がいる。そいつを見付けて排除して欲しいのだと、大佐は任務の概要を告げた。
 軍に話がきたということは、この星で働いている人には駆除できないような相手なのだろう。厄介な相手そうだが、内容としてはただの害虫駆除である。わざわざ人手を割くよりも、地球侵略に長期にわたって携わっているケロロ小隊に、本当に休暇込みでさせてしまおうという虫のいい通達だった。



掌の舞踏曲

「…目標、確認」
 大して待つ事もなく、眉間に皺をよせたクルルが呟く。
「ちょっと…マズいかもなぁ」
「どう言う事だ?」
「位置コードを各ソーサーに転送しますんで、説明は移動しながらさせてもらえますか」
 言いながらクルルの指がキーボードの上を滑ったかと思うと、端末を抱えて歩き出した。
「場所は少し離れた山中。隊長がオサンポで行くような所じゃないっスね。探査システムで確認できたって事はまだ生きてるが…」
「縁起でもない事を言うな!」
 通常ホーネット星人は、捕らえた獲物はすぐに殺し、肉魁にして巣へと運ぶ。しかしこの扱いには例外があり、繁殖期には眠らせて卵を産み付け、生きたまま子の餌とする習慣があった。地球の近くでのホーネット星人の目撃情報は今までなかったが、新たな繁殖場を求めて宇宙を彷徨っていた者が辿り付いたのかもしれない。ここに餌になりそうな生物は大量にいるが、たまたま好物のケロン人を見付けて捕まった可能性があると、クルルは告げた。
「もしも卵の餌場にされているとしたら、産み付けられてから孵化するまではポコペンの時間で約六時間。…あまり時間はない」
 冬樹の目撃情報は昼前の十一時位。今は二時を少し回ったところだった。
 これは考えられる中でも最悪のケースを想定したものだ。当然可能性はかなり低いが、ゼロではない。
移動しながらの説明にギロロの目が見開かれる。
「…あのバカがっ! 迷っているだけだったら只じゃおかん!!」
 杞憂であればいい。そう願いながら、一同はケロロの居場所として示された山中に向かった。




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